「ナイフは、人間が火の次に手に入れた道具である」。
 師匠ラブレスの言葉を借りるまでもなく、有史以来、なくてはならない道具として使われてきました。
 西部開拓で、見果てぬ夢を抱きワゴントレイルした開拓民が、日常のすべての「切る」作業をしたのは、ボウイナイフです。現代のモンタナカウボウイ達も、尻ポケットに小さなナイフを携行しています。
 それぞれの時代に使われてきたナイフですが、太古の先人達が使ったものと、今我々が手にしているものは、形状に大した違いはありません。
 人類が直立歩行を続け、ホモサピエンスとして誇りを持ち続け、文明と文化を継承する限り、形状は大きく変われないと私は思います。
 変わってきたのは、ブレードの素材です。
 時代、時代の、最高の素材が使われてきました。
石器時代の最高の素材は、いうまでもなく石にほかなりません。石器をスタートに、骨器、青銅、鉄器という変遷を経て、現代のステンレス全盛に到達しました。
 今、私が考える理想のナイフとは、「切るための道具」として正しく立脚したものです。
 現在、市場に流通しているナイフの多くは、使用目的を逸脱し、いたずらにデザイン優先に走り過ぎていると思います。
「道具」とは、本来の使用目的に合致しているからこその機能美を、必然的に持つものです。
 私はカスタムナイフ・メーカーとして、いささか大それていますが、このようなものを「理想のナイフ」と心に決めて、作っています。 (相田義人)

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